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乳癌

乳癌とは 慈恵医大外科での治療と成績 乳癌のQ&A
  1. 乳癌に関する基礎知識
  2. 乳癌の症状
  3. 乳癌が疑われたら:診断の手順
  4. 乳癌といわれたら:乳癌の進行度
  5. 乳癌の治療

1.乳癌に関する基礎知識

乳癌の発生と進展

乳癌は、乳腺組織の乳腺腺房(小葉)細胞あるいは乳管細胞が悪性化するものです。悪性化すると、周囲の正常細胞を殺しながら増殖していき、乳管を伝わって周囲に拡がったり、基底膜(乳管の壁)を突き破り周囲の脂肪組織や筋肉に食い込んだり、皮膚を突き破って潰瘍を形成したりするだけでなく、リンパ管や血管に入り込み、周囲のリンパ節や他の臓器(骨、肺、肝臓、脳など)にも拡がっていきます。

乳癌の危険因子

乳癌発生に関与する因子としては女性ホルモン(エストロゲン)が第一に挙げられます。ですから、初経年齢が早い人、閉経年齢が遅い人、出産経験がない人、初産年齢が高い人、長期の女性ホルモン補充療法を受けている人などはリスクが高くなります。但し、経口避妊薬(ピル)との関連は明らかではありません。また近年アルコール摂取も乳がんの危険因子とわかってきました。

また、エストロゲンは脂肪組織でも作られるため、肥満もリスクの一つと考えられています。その他、脂肪(特に動物性脂肪)摂取量が多いこともリスクにつながるといわれています。

乳癌と遺伝については、現在乳癌家系として知られるのは乳癌・卵巣癌が多発する 乳がん抑制遺伝子(BRCA1、BRCA2) 変異で、遺伝性乳癌の30〜40%を占めるといわれています。特にユダヤ人家系に多くみられ、BRCA1の変異では高率に乳癌と卵巣癌を発症します。日本では約100家系あるといわれています。BRCA1、BRCA2遺伝子変異以外にも家族性乳癌は存在すると考えられていますが、いまだに原因遺伝子は明らかになっていません。一般に、母または姉妹が乳癌にかかった、特に若年で発症した場合リスクは大で、他に同一家系内に乳癌にかかった人が複数いる場合もリスクが高くなります。

わが国の乳癌

アメリカでは一生涯で8人に1人が乳癌にかかるといわれて、2004年には21万7000人が乳癌に罹患し、4万人以上が乳癌で亡くなると予想されています。わが国では欧米に比べ、乳癌の発生頻度は低いものの、その罹患率は増加し、乳癌は現在日本女性の癌の第1位となっています。我が国で乳がんになる人は毎年約4万人で、現在でも増え続けています。欧米では1990年後半から検診の普及もあり乳癌による死亡数は減少していますが、我が国では約1万人が毎年乳がんにより亡くなっており、その数も年々増加しています。

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2.乳癌の症状

代表的な症状

代表的な症状は以下の通りです。

  • しこり
  • 皮膚の変化(引きつれ・発赤・浮腫・潰瘍)
  • 乳頭よりの異常分泌(血液の混じったものや褐色のもの・黄色や透明などさまざま)
  • 乳頭の変形・引きつれ・陥没
  • わきの下のリンパ腺がはれる
■ 乳癌の症状
乳癌の症状/乳頭乳輪部のびらん.皮膚のえくぼ症状.皮膚の発赤と浮腫.血性乳頭分泌.
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3.乳癌が疑われたら:乳癌の診断手順

A ) 視・触診

皮膚・乳頭の変化を肉眼で見たり、しこりの性状や大きさ、腋窩リンパ節腫大の有無を手で触って調べます。

B ) 画像診断

マンモグラフィ(乳房単純レントゲン撮影)・超音波・CT・MRI・乳管内視鏡などがあります。

  • マンモグラフィ :乳房をはさんでレントゲン撮影し、X線の透過性の違いから病変を発見する。腫瘤や石灰化・乳腺の構築の乱れなどから異常をみます。
  • 超音波 :超音波を使って、乳房組織の音波の跳ね返りの違いから変化を発見します。しこりの性状を判断するのに適しています。
  • CT/MRI :造影剤を静脈内に注射しX線や核磁気を使って乳房の断層写真をとり、乳房内部の造影剤の染まり方の違いから病変を発見します。乳がんの拡がりをみるのに適しています。
  • 乳管内視鏡 :乳頭部より乳管内に細い内視鏡を挿入し、乳管内部の病変を直接観察します。特に血性乳頭分泌物がみられる乳頭近くの病変の観察に適しています。
■ 乳癌の画像診断
乳癌の画像診断/マンモグラフィー,超音波,MDCTで見た腫瘍.乳管内視鏡で見た乳管内の隆起性病変.

C ) 生検による病理組織診断

実際にしこりに針を刺して細胞を吸い取る穿刺吸引細胞診・針を刺して組織を取る針生検やマンモトーム生検・手術をして組織をとる手術的生検により、実際の細胞や組織を採取し、顕微鏡で形態を調べます(病理学的検査)。

■ 病理学的診断
超音波ガイド下の細胞診
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4.乳癌といわれたら:乳癌の進行度

乳がんの進行度の分類

乳癌の進行度は、以下のように分類されます。

非浸潤性乳癌

非常に早期の乳癌です.乳癌は発生した乳管または小葉の上皮内にとどまります。

浸潤性乳癌

乳癌細胞は乳管や腺房の壁を突き破って周囲に拡がるため、直上の皮膚の変化を起こしたり、深部の筋肉に食い込んだり、血管・リンパ管に癌細胞が入り込み他の臓器(骨・肺・肝臓・脳など)に転移する可能性があります。

転移性乳癌

乳癌細胞が乳房のみならず他の臓器に拡がった状態で、無症状のときもありますが、進行すると骨転移による骨の痛みや骨折・肺転移による咳や呼吸困難・胸膜転移による胸水・脳神経転移による頭痛や神経症状がみられたりします。

一般に乳癌は、局所での拡がり(しこりの大きさや周囲への拡がり)、リンパ節への転移、他臓器(胸壁、骨、肺、肝臓、脳、その他)への転移の程度によって進行度が決まります。

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5.乳癌の治療

乳がんの治療

乳癌に対する治療は、癌の種類,乳癌の発生部位,進行度などにより決まります。さらに、患者さんの年齢、閉経の有無、全身状態なども考慮されます。
乳癌に対しては、手術,放射線治療,抗癌剤治療,ホルモン治療、生物学的治療の5つの標準的な治療法があります。手術と放射線療法は局所に対する治療で、抗癌剤とホルモン・生物学的治療は全身に対する治療です。個々の患者さんに応じて、5つの治療法の中から1つ、あるいは複数組み合わせた治療法が選択されます。

癌が局所にとどまると考えられた場合は、手術療法が主体となります。手術後残った乳腺や周囲組織に放射線療法を加えることもあります。乳癌が大きい場合・わきの下のリンパ節に癌細胞が転移していた場合や、検査により将来癌が全身にひろがる可能性が高い場合など、全身臓器への再発の危険性が高い場合には、手術前または後に抗癌剤治療・ホルモン治療・生物学的治療が付加されます。この目的は、身体に残っている可能性のある発見不可能な癌細胞を撲滅させ、再発を防ぐことにあります。

すでに全身に癌が拡がっていると考えられる場合は抗癌剤治療・ホルモン治療・生物学的治療が主体となりますが、症状を取るための放射線照射や手術も併用されます。

治療法の詳細は、『慈恵医大外科での治療と成績』をご覧下さい。

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