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肝細胞癌

肝細胞癌について 慈恵医大外科での治療と成績 Q&A

Q1 肝臓の働きにはどのようなものがありますか?

A1 肝臓は、体の中でもっとも大きな臓器です。この大きな肝臓の中では、いろいろなことが起こっています。毎日われわれが摂取している食事は主に炭水化物、脂肪、たんぱく質で、これらが腸より吸収され、三大栄養素と呼ばれる、ブドウ糖、脂肪酸、およびアミノ酸になります。これら3つの栄養素は吸収されたのち肝臓に入り、人体に必要なエネルギー、細胞構築成分、ホルモン、たんぱく質などが作られます。したがって、肝臓はいわば人体にとっての化学工場と考えられ、必要不可欠な臓器であります。その他の働きとして、消化液の1つである胆汁(脂肪やいくつかのビタミンの吸収に役立っているもの)を作ること、くすりなどの解毒、免疫、強い肝再生力などがあります。

Q2 肝炎ウイルスにはどのようなものがありますか?

A2 肝炎ウイルスにはA、B、C、D、E、G、TTの7種類が同定されています。これらのうち持続感染して慢性肝炎を引き起こすのはB型とC型の肝炎ウイルス(HBV、HCV)で、血液や体液を介して感染します。A型とE型は一過性で慢性化はせず、またD型はHBV感染者のみに感染するウイルスで、飲食物を介して経口感染します。したがってA型およびE型は、飲み水や生ものに注意し、手洗いやうがいなどを行うことが予防として必要です。なおB型やC型は、日常生活(食事、入浴など)ではほとんど感染しません。

Q3 肝炎ウイルスに感染するとどうして肝細胞癌になるの?

A3 肝細胞癌が発生する第一の要因は、B型やC型肝炎ウイルスの肝臓への持続感染による炎症の存在です。肝細胞癌のほとんどが、炎症が持続的に起こることによる慢性肝炎や肝硬変となった肝臓に発生します。持続的炎症による肝細胞の壊死とそれに引き続きおこる再生が繰り返され、この過程において一部の肝細胞に悪性形質転換が起こると考えられています。わが国の肝細胞癌症例の約90%にB型やC型肝炎ウイルス(HBV、HCV)が認められています。

HBVではその感染後、ウイルスが排除できず慢性肝炎になった場合、HBVが肝細胞の遺伝子に入り込んで発癌の原因になるといわれています。一方、HCVは感染して20~30年後に、 肝硬変の状態になってから肝細胞癌が発生することが多いです。したがってHBVはまだ肝硬変に至る前の45~55歳の男性に多いのに対し、HCVではその大半が肝硬変から発生するため60~70歳に好発します。その他、アルコール性肝硬変や自己免疫性肝炎および原発性胆汁性肝硬変を背景として肝細胞癌が発生することがあります。

また最近ではアルコール摂取がないにもかかわらず脂肪肝から脂肪肝炎を生じ(非アルコール性脂肪肝炎NASH(ナッシュ):Non-alcoholic steatohepatitis)、その過程で肝細胞癌が生じることがわかっていて近年増加傾向です。NASHはいわゆるメタボリック症候群と呼ばれる肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症を合併することが多く何らかの関係がありそうですが、NASHや発癌のメカニズムについてはまだ解明されていません。

Q4 肝細胞癌の画像診断について教えてください

A4 肝細胞癌の画像診断の手順としては、侵襲の少ない超音波検査がまず行われます。肝臓の状態を把握し(慢性肝炎や肝硬変など)、肝細胞癌に特徴的な所見(辺縁低エコー帯:黒く見えること、モザイクパターン、外側陰影・後方陰影の増強など)が認められれば診断されますが、2 cm以下の場合、典型像を呈さずそ診断が難しい場合もあります。また超音波造影剤(血流評価)を用いた造影ハーモニックパワードプラ法など造影超音波検査法も必要に応じて行います。

次の段階としてCT検査やMRI検査を行います。CT検査には造影剤を用いない単純CT検査と造影剤を用いた造影CT検査があります。造影剤の流れから血行動態を捉え、肝細胞癌などの血管増生に富む腫瘍を診断することができます。マルチスライスCT(MDCT:Multi detector-row CT)では肝静脈や門脈を描出した縦切りの画像、血管構築像も得られます。また放射線を使わず、磁気を利用したMRI検査も、他の腫瘍と鑑別が必要となる腫瘤の判定に利用します。EOBプリモビストMRI検査は、肝細胞癌の診断には非常に感度がいいとされています。

さらに詳細な診断が必要な場合は血管造影を行います。これは、通常大腿動脈(足の付け根)から肝動脈に細い管(カテーテル)を入れて造影剤を直接注入し、肝内の血管を写し出す検査です。DSAというデジタル処理により、繊細な血管の描出が可能です。血管造影とCTを組み合わせた検査(CTアンギオグラフィー:CHA、CTAP)も肝細胞癌の診断には非常に有用です。

Q5 肝臓の手術方法はどのように決まるのでしょうか?

A5 肝切除術の術式には切除する量により、肝核出術、肝部分切除術、肝亜区域切除術、肝区域切除術、肝葉切除術、拡大肝葉切除術があります(図1)。腫瘍の大きさ、腫瘍の存在部位、および肝機能により手術の術式が決定されます(図2)。大きく切除することで肝細胞癌に対する治療効果が高まりますが、一方では肝臓に対する手術侵襲が大きくなり術後の肝不全のリスクが高まります。また肝細胞癌は門脈血流にのって肝臓内へ転移するので、肝細胞癌が存在する門脈支配領域を切除することが治療効果を高めます。

図1 主な肝切除の術式
図2 肝細胞癌の肝切除適応基準

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Q6 肝臓手術の合併症について教えてください

A6 肝臓手術後の代表的な合併症について以下に簡単に述べます。

術後肝不全:
 手術による過度の侵襲を契機に肝臓が働かなくなる状態。黄疸、腹水、低タンパク血症、凝固異常、出血傾向、意識障害などの症状が出現し、黄疸の増悪とともに腎機能低下、意識障害をきたします。
胆汁漏:
 肝切除断面や太い胆管から胆汁が漏れることがあり、比較的高頻度な合併症です。胆汁漏は通常、自然に止まりますが、肝硬変などの場合には遷延することがあります。また細菌が感染すると腹腔内膿瘍の原因にもなります。
後出血:
 手術が終了したあとに起こる術後出血のことで、肝臓の血流が豊富なことや肝硬変といった血液が固まりにくい状態などが原因です。
腹腔内膿瘍:
 胆汁漏が原因となることが多い。

その他、創感染、消化管出血、胸水・腹水や、脳(脳出血、脳梗塞)、肺(肺炎、肺梗塞、無気肺)、心臓(心筋梗塞、心不全)、腎臓(腎不全)など全身にかかわる合併症もあります。

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Q7 肝細胞癌の切除後の再発防止について教えてください。

A7 肝細胞癌の治療後には、高率に再発するという問題があります。この再発を予防するために有効な治療にウイルスの除去というものがあります。ウイルスを除去することで、その後の肝炎から肝硬変へ、また肝硬変の進行から末期肝不全への進展を抑制することができます。ウイルスに対する治療(抗ウイルス療法)は、近年、目覚ましい進歩があり、非常に効果のある薬が出てきています。また、以前は治療効果がなかった場合でも新しい薬も出ています。

B型肝炎とC型肝炎では治療薬が異なっていて、それぞれガイドラインにしたがって治療が行われます。それではそれぞれ簡単に見ていきましょう。

B型肝炎に対しては、インターフェロン、アデホビル、エンテカビルというお薬があります。これらは抗ウイルス薬であり、ウイルスの状況や年齢などを考えて使われます。一方、C型肝炎については、インターフェロン、リバビリンというお薬が使われます。それぞれ、副作用もありますが、ウイルスが除去される、またはウイルス量が減少する効果を期待して使われます。ウイルスが除去される、またはウイルス量を少なくする事ができれば、肝がんの再発率もかなり低くすることができます。肝がん治療後には、ぜひ継続して肝臓のフォローをしていくことをおすすめします。

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