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肝細胞癌

肝細胞癌について 慈恵医大外科での治療と成績 Q&A

慈恵医大肝胆膵外科における肝細胞癌に対する治療

当科において行っている治療は大きく分けて、1.外科的治療法2.非手術的治療法があり、治療によっては他科と協力して行う場合もあります。どの治療法を選ぶのかは、腫瘍の大きさ・個数、肝機能(肝予備能)、他臓器への転移の有無、および全身状態をチェックして総合的に判断しますが、基本的方針は、画像診断で検出されたすべての肝細胞癌の制御です。

1.外科的治療法

A. 肝切除術

癌を除去する最も確実な方法です。腫瘍が大きい場合や腫瘍個数が多い場合は切除範囲が大きくなります。切除許容範囲は患者さん自身の肝予備能(肝機能)により決定され、肝予備能が不良の場合、切除範囲が制限されます。当科では血清ビリルビンの値、ICG R15テスト(インドシアニングリーン(ICG)という検査薬を静脈内投与し、15分後に採血してその停滞率を測定)、およびアシアロシンチグラフィーなどを参考にして、肝予備能評価および切除許容範囲を決定します。切除範囲により術式名が核出術、部分切除、亜区域切除、区域切除、葉切除、拡大葉切除となります。(肝細胞癌Q&Aを参照

腹腔鏡下肝切除術
1cmほどの穴を3~4ヶ所開けて、腹腔鏡というカメラを挿入し、モニター画面に映ったおなかの中をみながら肝切除を行うもので、手術侵襲や術後疼痛の軽減に有効です。
腹腔鏡下肝切除術
術前門脈塞栓術
肝切除後の残肝容積が小さくなると予想される場合、手術前に右または左の門脈を塞栓することで、反対側の門脈血液流量が増加し、肝臓の容積が増加します。このような術前の処置をすることで残肝容積の安全域を確保し、安全に肝切除を行うことができます。
肝臓画像ナビゲーション
術前のCT検査データからコンピュータを駆使し、肝臓、肝細胞癌、および肝臓内の血管の3D画像を構築し、実際の手術のシュミレーションや切除後の残肝容積の測定が可能となります。
肝臓画像ナビゲーション
B. 肝移植

肝細胞癌に対する肝移植は、癌が一定の条件(遠隔転移と脈管侵襲を認めないもので、腫瘍径および腫瘍個数が径5cm以下が1個、又は径3cm以下3個以内に限る)を満たせば、保険適応となります。2007年6月からは、移植前に肝細胞癌に対する治療を行なった症例に対しても、当該治療を終了した日から3ヶ月以上経過後の移植前1ヶ月以内の術前画像をもとに判定することになりました。この場合、完全に壊死に陥っている結節は、肝細胞癌の数として算定しないとされています。
当院の生体肝移植についてを参照)

2.非手術的治療法

A. 局所療法
エタノール注入療法(PEI:percutaneous ethanol injection)
肝細胞癌に直接アルコール(無水エタノール)を注入して腫瘍を殺してしまう方法です。主に超音波を使用し、皮膚の上から腫瘍に針を刺してアルコールを注入します。一般に腫瘍の大きさが3cm以下、3個以内の場合に適応があります。超音波で描出が困難な位置にある場合は実施できません。これは以下のMCTやRFAの場合も同様です。
エタノール注入療法(PEI:percutaneous ethanol injection)
マイクロウエーブ凝固療法(MCT:microwave coagulation therapy)
マイクロウエーブは電子レンジと同じ原理で腫瘍を凝固壊死させます。凝固範囲は1~2cmであるため、RFAより一回の凝固範囲が少ない欠点があります。
マイクロウエーブ凝固療法(MCT:microwave coagulation therapy)
ラジオ波焼灼療法(RFA:radiofrequency ablation therapy)
ラジオ波を利用して腫瘍を焼灼します。特徴として焼灼範囲が3 cm前後と、MCTに比較して1回で広い範囲を治療することができます。
ラジオ波焼灼療法(RFA:radiofrequency ablation therapy)
B. 肝動脈(化学)塞栓術
(TACE:Transcatheter hepatic arterial chemoembolization)

肝細胞癌がある程度大きくなるとその栄養血管が動脈のみとなるため、カテーテル(細い管)を腫瘍の手前の肝動脈まで挿入し、水溶性抗癌剤をリピオドールなどの油性物質に混ぜて投与したうえでゼラチンスポンジなどの塞栓物質で動脈をつめ、局所的に癌を兵糧攻めにすることで壊死させる治療法です。またリピオドールなどの油性物質に抗癌剤を混ぜてそれをカテーテルから注入する方法(リピオドリゼーション)もあります。

C. 肝動注療法

肝動脈に挿入したカテーテルを皮下に埋め込んだリザーバーというタンクを通して抗癌剤注入を行う方法で、リザーバーの留置には2日ほどの入院が必要ですが、その後の投与は外来での施行が可能です。上記の治療の適応がない場合に行われます。

D. 分子標的治療薬

がんが増殖し、進展・転移していくメカニズムが遺伝子、分子レベルでわかってきています。この知識を応用して、遺伝子・分子レベルでのがんの増殖や転移を抑えようと考え出されたのが、分子標的治療薬です。最近、肝細胞癌の治療に分子標的治療薬(ソラフェニブ)が保険採用となりました。このお薬は、肝細胞癌の増殖とそれに必要な血管新生を抑えることで、肝細胞癌をやっつけようというもので、抗癌剤とは違った作用のお薬です。現在のところ他の肝細胞癌の治療にてがんの進行の制御が不可能の場合のみ適応となります。治療効果としては、肝細胞癌の進行を抑えて生存期間を延ばすことで、がんを直接やっつけるものではありません。

E. 放射線療法

通常は、肝細胞癌に対して放射線療法は無効とされていますが、肝臓の部分照射が安全にできるようになり、特に腫瘍が血管の中に飛び出した場合(腫瘍栓)に有効な場合があります。当院では放射線治療部が施行しています。

当科での肝細胞癌切除成績について

当科における肝切除および膵切除術症例数の年次推移を示します(図3)。肝切除症例数の減少は積極的なラジオ波焼灼術の採用に伴う結果です。2000年1月から2013年10月までの当施設における初発肝細胞癌切除症例213例の結果を図4に示します。年齢は平均63(29-90)歳、男女比=167:36であり、5年生存率は71.3%とこれは全国原発性肝癌追跡調査報告の5年生存率54.2%と比較して良好な成績です。この期間の術後合併症を前と中・後期に分け比較しますと、合併症39%→25%、手術関連死亡10%→1.6%とより安全に肝切除が行われていることがわかります(図5)。

図3.肝・膵の切除症例数の年次推移

図3 肝・膵の切除症例数の年次推移

図4.初発肝細胞癌に対する肝切除成績(2000年1月~2010年3月、n=146)

図4 初発肝細胞癌に対する肝切除成績

図5.術後合併症・手術関連死亡

図 5 術後合併症・手術関連死亡

(2014年8月3日更新)