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肝細胞癌

転移性肝臓癌とは 慈恵医大外科での治療と成績

慈恵医大外科における治療

治療方法は大別すると、外科的治療法と内科的治療法があります。どの治療法を選ぶかは、原発臓器、腫瘍の大きさおよび数、他臓器への転移の有無、肝機能(肝予備能)などをチェックして総合的に判断しますが、基本的な治療目標は、肝臓の腫瘍を全て取り除き、癌の存在を肝臓からなくした状態にすることです。

1.外科的治療法(肝切除術)

□ 外科的治療の条件

外科的治療法は、癌を切除することで肝臓から腫瘍を除去することが可能なる最も確実な方法です。転移性肝癌に対する肝切除の適応は次のような条件を満たした場合に検討されます。

  1. 安全な肝切除量の範囲内で転移巣が完全に切除できること。
  2. 原発巣を含めた他臓器病変が外科的に制御可能であること。

また腫瘍の大きさや数が多く広範囲の切除が必要となる場合、この切除許容範囲は患者さん自身の肝予備能(体を維持するための本来の肝機能の能力)により決定され、肝予備能が不良の場合、切除範囲は制限されます。現在当科では、ICG-R15およびアシアロシンチグラムという検査の値を参考にして肝臓の切除量を決定しています。原発臓器による特徴については後述します。

【 術 式 】
術式は、肝臓の切除範囲によって以下のように分けられます。
部分切除・亜区域切除・区域切除・尾状葉切除・左葉切除・右葉切除・拡大左葉切除・拡大右葉切除・左3区域切除・右3区域切除。
また手術操作の必要に応じ胆嚢を同時に摘出することもあります。
【 合 併 症 】
術後は合併症が起こらなければ、約10日間で退院が可能です。しかし外科的治療法は、一般に内科的治療法よりも侵襲が強く以下のような合併症が生じる場合も少なからずあります。
  1. 手術操作に直接関係する合併症(偶発症)術後出血、創感染(10.8%)などの感染症、胆汁漏(7.8%) など
  2. その他の合併症(臓器別)
中枢神経系(脳出血/脳梗塞/せん妄など)、循環器系(心不全/虚血性心疾患[狭心症・心筋梗塞]/不整脈/高血圧など)、呼吸器(無気肺/肺炎など)、消化器(肝不全/急性胃粘膜出血/腸閉塞など)、その他(腎不全/尿路感染症/静脈血栓症など)
  3. 麻酔による合併症: 手術前に麻酔科医から説明があります。

( )で表示した数値(%)は慈恵医大付属病院で最近(2001年1月から2011年4月まで)行われた大腸癌肝転移に対して施行された肝切除術症例の術後に発生した合併症(偶発症)の頻度を示しています。この他にも文献的には極めてまれな合併症が種々報告されています。肝切除術が原因となった在院死亡はありませんでした。

□ 一期的に肝切除を行うと肝切除量が大量となり肝不全が懸念されるような場合

転移性肝癌の数または広がりが広範囲なため、安全な肝切除量の範囲内での転移巣の完全切除が困難な場合があります。しかし現時点では転移巣の根治性を最も期待できる治療法は肝切除であると考えられます。

このため当教室では、外科的に切除できる機会をできるだけ増やし、転移性肝癌に対する治療成績を向上させようと努力しています。具体的には次にあげる4つの方法を検討しています。

1) 化学療法によるdownstaging + 肝切除術:
まず化学療法を行なって転移巣の容積を縮小させることによって、転移巣を完全に切除するのに必要な肝切除量を減少させる方法です。
2) 門脈塞栓術(PVE) (残肝の大きさ<30%のとき) + 肝切除術 
肝臓には、門脈と肝動脈が流入しています。このうち左右いずれかの門脈を塞栓すると反対側の肝葉が約10%腫大することが期待されます。この方法で術前に残肝の容積を大きくして肝切除をする方法です。
3) 肝切除術+ラジオ波焼灼療法(RF)
転移巣のうち、主病巣を切除しても残肝内の腫瘍が3個以内,大きさ3cm以下 の範囲内で残存する場合にラジオ波焼灼療法を併用して残肝の腫瘍も治療する方法です。
4) 2期的肝切除術 
肝臓は、大量に切除しても残肝が腫大して約3週間後にはほぼ元の大きさに戻ると云われています。転移巣のうち、主病巣を切除しても残肝内の腫瘍が3 個以上、大きさ3cm以上であった場合、まず主病巣を切除後残肝の腫大を待って2期的に残肝内の転移巣を切除する方法です。
□ 再発した場合の再肝切除について

転移性肝癌に対して肝切除後の再発例に対する再肝切除率は諸外国で5〜10%、本邦では18%であり、手術が選択肢の一つと考えられています。さらに5年生存率も、初回肝切除例と同等となってきています。以上より,当科では今後肝切除後再発例に対する再肝切除も積極的に取り組んでいく方針です。

原発臓器別の特徴について

転移性肝癌の代表的な原発臓器別の治療について説明します。

大腸癌

大腸・直腸癌の肝転移術後の5年生存率は25%から40%と諸家から報告されていますが、Stage IVという進行度からすると良好な成績であるといえます。腹部の消化器の血液は一度肝臓を通ってから全身に回るため、肝転移は肝臓というフィルターで癌細胞がひっかかり発育した状態と考えることができ、他の臓器への転移の一歩手前の段階で見つかったと考えられるためです。従って大腸直腸癌からの肝転移に対しては肝切除が最も良い治療と考えています。ただし肝転移症例すべてが肝切除の適応となるわけではありません。肝門部リンパ節に転移がある場合は肝切除術を行っても長期生存が望めません。このような症例を除いて、手術はあくまで安全にしかも確実に全ての腫瘍が切除可能と判断される場合に行われます。正常肝の場合、非腫瘍部分の肝容量が30%以上残り、かつ腫瘍を全て除去できる場合に切除可能と判断します。肝切除後に残った肝臓に再発した場合は再度肝切除を追加することが最良と考えられます。当科での大腸癌肝転移根治切除例の5年生存率は46.7%(2000年1月~2011年4月 65例)と良好な結果が出ています。

大腸癌肝転移の根治切除 65例(2000年1月〜2011年4月 当院)
胃癌

肝転移を伴う胃癌の4割は腹膜播種を併存し、また6割が肝両葉にわたり転移巣を認めるため、肝切除の適応となるのは全体の1割程度です。しかしこのような場合、肝切除の治療成績は大腸癌と同等との報告もあり、手術適応例には積極的に切除をする方針です。肝切除の適応は、1)同時性と異時性を問わず、肝転移個数が1個で、腹膜播種および大動脈周囲リンパ節転移がない。2)異時性肝転移の場合は胃癌そのものが組織学的にリンパ管あるいは脈管侵襲がないか、あるいは肝転移が単発で腫瘍を取りきれると判断されること、などを条件としています。

膵癌・胆道癌

膵癌・胆道癌の肝転移は治療に奏効することがほとんどなく、診断時がついた時点で余命が限られている場合が多いのが現状です。したがって膵癌・胆道癌の転移については外科的切除でなく抗癌剤による治療が中心となります。

その他

卵巣癌や乳癌など比較的に抗癌剤の感受性の高い腫瘍での肝転移例では、原発巣のコントロールがされており、肝臓以外に転移巣がなければ、積極的に外科切除をしています。


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2.内科的治療法

種々の理由により外科的治療が適応とならない場合には内科的治療を行います。

内科的治療にはラジオ波凝固壊死療法(RFA)、マイクロウェーブ凝固療法(MCT)、皮下埋め込み式リザーバー動注化学療法などがあります。

A) ラジオ波凝固壊死療法(RFA)

ラジオ波を利用し腫瘍を凝固壊死させます。凝固範囲は3cmとMCTに比較すると広範囲を凝固することができます。2004年4月より保険適応となりました。

B) マイクロウエーブ凝固療法(MCT)

マイクロウェーブは電子レンジと同じ原理で、腫瘍を凝固壊死させます。凝固範囲は2cmであるためRFAより1回の凝固範囲は狭いです。

A)、B)両法は超音波で観察しながら、皮膚から針を腫瘍まで刺入し、焼灼する方法です。合併症として発熱・疼痛・腹腔内出血・胆道出血・肝膿瘍・胸水貯留などがあげられます。腫瘍が超音波で確認できない場合やその存在部位へのアプローチが体外から困難な場合は全身麻酔下に外科的に腹腔鏡や開腹により直接到達する方法も選択されます。また治療効果は造影CTなどで判断しますが、 不十分な効果と判断されれば追加治療が必要となります。

C) 皮下埋め込み式リザーバー動注化学療法

肝動脈に挿入したカテーテルを皮下に埋め込んだリザーバーというタンクを通して抗癌剤注入を行う方法で、リザーバーの留置には2-3日ほど入院が必要です。動注化学療法は外来での施行が可能ですが、抗癌剤の副作用や安全性の確認などの為、はじめは入院にて行うこともあります。合併症は留置したカテーテルの閉塞、移動による消化管に対する抗癌剤の流入による潰瘍形成や潰瘍出血、使用する抗癌剤による副作用(使用薬剤により異なりますので、個々に説明します)などがあげられます。

(2014年7月1日更新)