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肝臓の良性腫瘍

肝臓の良性腫瘍とは

肝臓の良性腫瘍

肝臓の良性の上皮性腫瘍には肝細胞腺腫、胆管嚢胞腺腫、胆管細胞腺腫などがありますがまれな疾患です。また非上皮性腫瘍としては、血管腫、血管筋脂肪腫、類上血管内皮腫などがあります。これらは肝細胞癌など悪性疾患との鑑別が問題になることがあります。用語の規定が一定しておらず混乱を招き易いですが、1994年カナダでInternational Working Party (IWP)分類として、肝癌との鑑別が難しい腫瘍類似性病変が二つに大きく分類され、肝腫瘍性病変としては前述した肝細胞腺腫、腺腫様過形成(AH)などがこの範疇に分類され、もうひとつの肝再生性病変として限局性結節性過形成(FNH)、結節性再生性過形成(NRH)、大再生結節(LRN)があります。その他、炎症性偽腫瘍(IPT)などがあります。

以下代表的なものの特徴を簡単に述べます。

■ 肝血管腫

肝良性腫瘍のうち、最も頻度が高く、女性に多く見られるとの報告もあります。単発性のことが多く、通常は無症状です。画像診断の特徴としては、超音波では高エコー域(白くみえる)として描出されますが、大きいものでは辺縁に高エコー域を伴い、中心部は不均一な低エコー域(黒くみえる)として描出されます。造影剤を用いない単純CTでは、低吸収域(黒くみえる)として描出され、造影CTでは、腫瘍辺縁から造影され、次第に中心部に向かって造影剤が充満していく、遅発性濃染像(ゆっくりと造影剤が白く写し出される)として描出されます。またMRI(撮影条件にT1およびT2という条件がある)はT1では均一な低信号(黒くみえる)、T2では著しい高信号(白くみえる)を呈し、血管腫を診断するには最も有用な検査です。通常は1年に一回の経過観察で良いのですが、腹痛などの症状を有するもの、増大するもの、血液凝固異常(血液検査ですぐにわかります)を伴うもの(Kasabach-Merritt症候群)は切除の対象となります。また破裂することは極めてまれとされますが、その場合は肝動脈塞栓術(肝細胞癌の治療の項目参照)が有用です。

■ 肝細胞腺腫

欧米では、大半が経口避妊薬を服用する若い女性に発症します。その他、糖原病Ia型への合併がみられます。自然破裂によりお腹の中に出血したり腫瘍の中に内出血することもあります。画像上の特徴は血管増生に富む点です。高分化型肝細胞癌(初期のもの)と組織学的に鑑別することが困難なことがあり、悪性化も報告されていますので、有症状・増大傾向があれば肝切除が必要ですが、経過観察で問題ない場合もあります。

■ 血管筋脂肪腫

腎臓に好発することで知られていますが、肝臓ではまれです。本腫瘍は、血管、平滑筋、脂肪が細胞の3成分が種々の程度に組み合わさり構成されています。経皮的針生検で本腫瘍と診断されれば、治療の必要はありません。しかし、最近、悪性化の報告もあったので、経過をみて、増大するような場合は切除したほうが良いでしょう。

■ 胆管嚢胞腺腫

30歳以上の女性に好発する多房性嚢胞性腫瘍です。悪性化することがあるので切除が必要となります。

■ 限局性結節性過形成

欧米では、女性に多いとされていますが、わが国では男女を問わず稀な腫瘤です。単発が多く、中心の線維性瘢痕(中心星芒状瘢痕)が特徴的肉眼所見です。特徴的な画像としては、造影CTにてまず結節の中心部が点状に染まり、速やかに車軸状に拡散して全体が濃染します。確定診断がつけば切除する必要はありません。

■ 腺腫様過形成

いわゆる前癌状態(近い将来、癌になる可能性がある)の腫瘍ですので、厳重に経過観察する必要があります。増大したり、血流が動脈優位になったら治療をします。

■ その他

結節性再生性過形成と診断されれば治療の必要はありません。大再生結節は肝細胞癌との鑑別が困難であり、切除しなければわからないことが多いです。また炎症性偽腫瘍は、発熱や白血球の増加、CRPの上昇(炎症の程度のマーカー)を伴い、画像的にも悪性との鑑別は容易でなく、肝生検が必須です。ステロイド剤が使用されることもありますが、症状が軽快しないものには、手術を施行する場合もあります。

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肝嚢胞について

肝嚢胞とは、上皮で内腔が覆われ、主として漿液成分(反応性の粘度が高くない液)を貯留した嚢状の肝内占拠性病変です。先天性と後天性に大別されます。ほとんどは単純性嚢胞であり問題がなく、症状がなければ経過観察で良いのですが、造影剤を用いた画像にて嚢胞壁の不整な肥厚と造影効果が認められれば、治療が考慮されなければなりません。

また多嚢胞性肝疾患では、肝全体を占め、黄疸の出現や圧迫による消化器症状が出現する場合があります。その場合、原因となる嚢胞を局所的に治療しますが、肝全体に及ぶ場合には、肝移植が考慮される場合もあります。その他、寄生虫などにより後天性に生ずる場合もありますが、キタキツネなどから感染したエキノコッカスによるものなどが知られています。

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