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食道癌とは | 治療の特色と成績 | 食道の病気 Q&A |
食道癌手術において食道切除後に食道の再建が必要になります。食道の再建臓器として胃のほか小腸や大腸も使用されますが、延伸性や血流の豊富さで主に胃を利用した胃管が用いられています。しかし胃管作製の特性上、胃管先端部の血流不足による縫合不全の発生頻度が他の消化管癌手術に比べ高くなっています(約5~20%)。そこで、従来外科医の視触診で行っていた血流判断を当院では術中サーモグラフィーを用いることで客観的に血流評価をし、その利用目的は2つあります。一つ目は患者さん一人一人に最適な血流分布を考慮した胃管をシミュレーションし作製します。2つ目は胃管作製後に確実な吻合部位の位置決定にもサーモグラフィーを利用しています。このように術中にサーモグラフィーを用いることで胃管の血流障害に伴う術後縫合不全を少しでも軽減させる努力をしており、最近2年間(2013年、2014年)では縫合不全は1例しか生じておりません。
サーモグラフィー画像
食道癌の根治手術においては、腫瘍部を含む食道切除だけではなく広範な転移(可能性)リンパ節の郭清(=摘出)が必要になってきます。特に郭清するリンパ節のなかでも反回神経周囲のリンパ節は転移のしやすいリンパ節の一つで同リンパ節を切除することが根治手術には不可欠になります。この反回神経は発声に必要な声門の動きを支配している唯一の運動神経で損傷してしまうと術後に声がかすれたり、完全に声門が閉じたり気管切開が必要になる場合もあります。このような合併症を少しでも軽減するために術中にNIMを使用することで反回神経を確実に同定することが可能であり、結果的に障害を防ぐことができます。
反回神経刺激風景と刺激装置
消化管外科は肝胆膵、呼吸器、乳腺、小児、血管外科を含めた外科学講座のひとつの診療班として組み込まれているため、食道癌治療に関わる医療連携が迅速に対応できることが可能であり非常に有意義なシステムであります。
手術件数推移
累積生存率
(2014年10月22日更新)