HOME > 疾患グループ > 血管外科 > 胸部大動脈瘤

胸部大動脈瘤

胸部大動脈瘤とは 慈恵医大外科での治療と成績

胸部大動脈瘤とは?

胸の大動脈がこぶ状に拡大する病気です。できる場所によって上行大動脈瘤、弓部大動脈瘤、下行大動脈瘤、胸腹部大動脈瘤などに分かれます。胸腹部大動脈瘤はその拡がった範囲によって分類されます。また、形態によって紡錘状、嚢状に分けられます。原因は動脈硬化による血管の劣化がおもな原因ですが、感染、外傷などにより起こることもあります。

↑上へ戻る

どんな症状があるの?

動脈瘤の最も恐い合併症は破裂です。破裂した場合の、治療成績はきわめて不良で場合によっては病院にたどり着けずに突然死となることもあります。日本全国で年間約8万件の突然死がありますがそのうちの約1割が動脈瘤の破裂と推察されます。東京都医務観察院の統計によると急死例の7.7%が動脈瘤の破裂であったということです。胸部大動脈瘤の場合の破裂は喀血といって血痰が出ることもあります。また、塞栓症といって動脈瘤の中の壁在血栓などが足やお腹に飛んで詰まることがあります。ひとたび破裂をすると上記のように結果は不良なのですが破裂しないと全くの無症状です。急激に大きくなる際には背部痛などを伴ったり、弓部大動脈瘤では声がかすれたり(嗄声)、ものが飲み込みにくくなったりすることもありますが大半は破裂するまで無症状で経過します。したがって、欧米ではsilent killer(沈黙の殺人者)といわれます。

↑上へ戻る

症状がないのにどうやって発見されるの?

大半は検診の際や他の病気で病院にかかった際の胸部レントゲンやCTスキャンで偶然発見されることが多いのです。CTスキャンは動脈瘤の発見に極めて有効です。

↑上へ戻る

胸部大動脈瘤といわれたら?

まずは治療の必要があるかどうか見極めることが大切です。一番怖いのは破裂ですので治療の目的は破裂の予防です。したがって動脈瘤だといわれた場合、その動脈瘤が破裂しやすいかどうかを検討します。これにもCTスキャンが有用です。動脈瘤破裂の危険因子(破裂しやすい因子)はまずその大きさ(直径)です。直径60mm以上は破裂しやすいといわれております(年間30%)。また、急速に拡大傾向(半年で5mm以上拡大)のあるもの、痛みなどの症状を伴うものは破裂しやすいとされております。また、形態的に嚢状の瘤は破裂しやすいとされています。その他、女性であったり、高血圧、喫煙者、閉塞性肺障害(COPD)などを有するほうが破裂しやすいといわれています。したがってこれらに該当する場合は治療の必要があるということになります。これらに該当しない小さい動脈瘤の場合は定期的にCTで観察し、大きくなってくるようならその時点で治療ということになります。

↑上へ戻る

治療は?

治療の目的は破裂の予防です。一般的には動脈瘤の部分を人工の血管で置換する人工血管置換術という手術が行われます。開胸した後に、体外循環を使用して下半身や臓器の血流を維持しながら人工血管置換術を行います。動脈瘤が頭の血管や脊髄の血管や内臓の血管にかかっているときにはそれらの血管も再建する必要があります。したがって動脈瘤の範囲が広いほど合併症を起こす可能性もふえてきます。一番怖い合併症は対麻痺(脊髄麻痺による下半身の麻痺)です。そのほか一般的には脳梗塞、出血、腎不全などの臓器不全、肺炎、人工血管感染などが見られる可能性があります。

また、近年はステントグラフト内挿術という方法も行われます。これは足の付け根の部分を約3cmほど切って大腿動脈からステントグラフトというばねつきの人工血管を挿入する方法です。直径7-8mmの管をとおして大腿動脈からステントグラフトを挿入します。動脈瘤の前後の正常な径の血管にステントグラフトが固定されることにより動脈瘤の内部には血流がなくなるので破裂が予防されるということです。この方法は1991年から始まった新しい方法ですのでその長期成績は明らかではありません。しかし、そのことを差し引いたとしても多大な利点があります。まず、この方法を行うためには全身麻酔ではなく腰椎麻酔(場合によっては局所麻酔)で可能です。したがって術後早期に食事、歩行などが可能であると同時に入院期間も手術後2-5日程度です。また、さまざまな合併症(閉塞性肺疾患、心疾患など)を有する場合も安全に手術可能です。

治療法の詳細は『慈恵医大外科での治療と成績』をご覧下さい

↑上へ戻る