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胸腹部大動脈瘤

胸部大動脈瘤とは 慈恵医大外科での治療と成績

治療法は?

人工血管置換術

胸腹部大動脈瘤に対する治療の第一選択は人工血管置換術です。この外科手術は、あらゆる外科手術の中で最も侵襲の高い治療の一つと言われております。手術は左胸側方から腹部に至る大きな切開を必要とし、いわゆるdouble cavity incisionといわれる開胸操作に加えて開腹操作も必要とします。体外循環は動脈瘤部分および腹部分枝血流を迂回させるバイパス回路を使用します。横隔膜切開に加えて動脈瘤を全長にわたり露出し動脈瘤を切除後、全てを人工血管で置き換えます。手術では、下行大動脈から分かれる肋間動脈(脊髄に血液を供給する動脈)、腹部大動脈から分かれる腹腔動脈、上腸間膜動脈、左右腎動脈などの重要分枝血管を再建します。この際、この脊髄保護が不十分な場合、術後に対麻痺という下半身の神経障害を起こします。脳脊髄液ドレナージ(背中から脊髄に細いチューブを挿入し、脊髄の血流を改善させる方法)や、脊髄保護剤などの複数の脊髄保護法を組み合わる事で、脊髄神経障害の発生を抑えています。そのほか一般的には脳梗塞、出血、腎不全などの臓器不全、肺炎、人工血管感染などが見られる可能性があります。手術時間は通常6~8時間程度で入院期間は通常3~4週間必要とします。

図、皮膚切開(左図)とCrawfordⅡ型の人工血管置換後(右図)

図:皮膚切開(左図)とCrawfordⅡ型の人工血管置換後(右図)

血管内治療(ステントグラフト治療)

人工血管置換術は死亡率と合併症発生率が高いことから、多くの高齢者、心疾患や呼吸器疾患合併患者、開胸、開腹手術歴のある患者は「手術不能」として見放され、不安な日々を過ごしていると思います。こうした人工血管置換術が困難な症例に対して、我々はステントグラフト治療も幅広く行っております。しかし、ステントグラフトの弱点とされるのは腹部内臓の血管が枝分かれしている部分に瘤が存在する場合です。こういった分枝にまたがる動脈瘤に対しては、ステントグラフトに穴を開けたタイプ(穴あき:fenestrated)や腹部分枝用のスリーブ(side branch)を有するタイプ(枝付き:branched)などの最新式ステントグラフトを用いて治療を行っております。しかしこれらのステントグラフト治療は、解剖学的制約があり(全ての症例に使用可能とは限らない)、また完全custom-madeであり、発注から納入まで約2か月かかります。対象は胸腹部大動脈瘤の手術不能例に限りますが、解剖学的制約などにより穴あき/枝付きステントグラフト術が困難な場合は、ステントグラフト手術とバイパス手術を組み合わせたハイブリッド手術や自作ステントグラフト治療なども治療を行っております。またステントグラフト治療の方が一般的に脊髄神経障害の発生率は低いと報告されています。手術時間は通常4~6時間程度で入院期間は通常1~2週間必要とします。


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当科での成績

当科での過去8年間(2006年7月~2014年6月)255例の成績を示します。

胸腹部大動脈瘤の成績

人工血管置換術:122例

手術死亡:7例(5.7%)

合併症:

  • 肺炎・気管切開:4例(3.3%)
  • 対麻痺:4例(3.3%)
  • 腎不全:4例(3.3%)
  • 創部感染:2例(1.6%)
  • 腸閉塞:2例(1.6%)
  • 腸管虚血:1例(0.8%)
  • 上行大動脈解離:1例(0.8%)
  • 下肢コンパートメント症候群:1例(0.8%)

血管内治療:133例

穴あきステントグラフト(Fenestrated)
60例
枝付きステントグラフト(t-Branch)
13例
自作穴あきステントグラフト
23例
胸部ステントグラフト+腹腔動脈コイル塞栓
37例

  ◦穴付き(fenestrated)ステントグラフト術 60例

手術死亡:2例(3.3%)

合併症:

  • 対麻痺   1例(1.7%)
  • 腸間膜血腫 1例(1.7%)
    • 図:穴付き(fenestrated)ステントグラフト

      図:穴付き(fenestrated)ステントグラフト

  ◦枝付き(Branched)ステントグラフト術(t-Branch) 13例

手術死亡:1例(7.7%)

合併症:

  • 対麻痺   2例(15.4%)
  • 腸間膜血腫 1例(1.7%)
    • 図:枝付き(branched)の最新式ステントグラフト術

      図:枝付き(branched)の最新式ステントグラフト術

  ◦自作穴あきステントグラフト術 23例

合併症: 0例

  ◦胸部ステントグラフト+腹腔動脈コイル塞栓術 37例

手術死亡:0例

合併症: 0例