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肥厚性幽門狭窄症 胃食道逆流症 胃軸捻症 腸回転異常症 その他の嘔吐をきたす病気
小児外科 – 嘔吐を繰り返す病気

肥厚性幽門狭窄症

生後1カ月前後(新生児期より)で、ミルクを飲むと噴水状に吐くことで発症します。胃の出口の幽門の筋肉が厚くなり胃からのミルクの流れが悪くなり、胃が張って嘔吐を繰り返します。

一般的に超音波検査で幽門筋が厚くなっていることで診断ができます。治療として幽門の筋肉を緩める薬(アトロピン)を使用する方法もありますが、長期間ミルクが飲めないか、結局手術になることが多いので、我々は手術による治療をすすめます。従来の手術の方法は臍の右上に約3から4cmの切開を入れて幽門の筋肉のみを切開する方法が行われていますが、我々は、臍内の創のみから手術を行う方法や腹腔鏡を用いて幽門筋切開手術を行う方法など創が目立たないようにする工夫をしています。手術後はミルクが飲めるようになり2-3日程度で退院が可能になります。

胃食道逆流症

(※ 上部消化管外科のホームページの逆流性食道炎の項目も参照ください)

正常では、食べ物は胃から食道には逆流しないようになっています。そのため、人間は逆立ちしても嘔吐することはありません。しかし、この逆流防止機構が機能しなくなると、食べ物や胃酸が食道に逆流してしまいます。この胃の内容物が食道へ逆流してしまう現象を胃食道逆流現象といい、それに伴って症状が出てしまうものを胃食道逆流症といいます。症状としては、成人では胸焼けなどの自覚がありますが、小児では嘔吐を繰り返したり哺乳後にゼコゼコしたり気管支炎や肺炎を繰り返すなどの症状がみられます。突然死症候群の原因のひとつと言われています。ミルクや母乳を飲んでいる赤ちゃんには胃食道逆流症は時々みられることがありますが、食道や胃の発達が未熟であることが原因であり、成長とともに治ってしまうことがほとんどです。

小児の胃食道逆流症の診断のためには、上部消化管造影で直接逆流を確認するか24時間pHモニターで胃酸の食道への逆流を確認します。また、場合により内視鏡検査で直接食道炎の有無を確認します。生まれてすぐのお子様に発症した胃食道逆流症の場合は、ミルクを粘調なものに変えたり、離乳食を早めに与えるなどの食事の投与の注意を行いつつ、成人と同様な胃酸の分泌を抑える薬をのませたり、胃の動きを良くする薬を併用したりします。1歳過ぎても軽快しない場合や治療を行っても肺炎を繰り返したり、成長障害がみられる場合は、成人と同様に、腹腔鏡を用いた胃噴門形成術を行います。

また、重症身体障害児(者)によくみられる病気ですが、胃瘻の作成と一緒に腹腔鏡手術を行っています。食事が食べられない(チューブによる経管栄養が必要)患者さんで胃食道逆流がない方は内視鏡下に胃瘻の造設も行っています。

胃軸捻症

胃の一部または全体の異常な回転または捻転により出生後から嘔吐を繰り返したり、突然に腹痛と上腹部の膨満を併発して発症します。上部消化管(胃)造影で簡単に診断することが可能です。一般的に新生児期から嘔吐を繰り返す慢性型がほとんどですが、この場合、ミルクの与え方の指導を行い、保存的に治療を行います。お子さんの成長とともに症状は消失します。それに対し急性型は症状も激烈で食事が全く摂れない状態になり、手術により胃を固定することが必要なことがあります。

腸回転異常症

腸管(結腸)の後腹膜(お腹の中の背中側のこと)への固定の異常で腸閉塞の状態になったり、捻じれたりして放置すると腸が壊死(腐ること)することがある先天的な異常でも生後1カ月以内に嘔吐や腹部膨満などの症状で発症し、小学生や中学生のような年長児でも繰り返す腹痛または嘔吐という症状で発症します。

その他の嘔吐をきたす病気

食道閉鎖、腸閉鎖(狭窄)のように生まれつき消化管が閉塞している病気は、胎児期(後述)に診断がつくことも多く、出生後比較的早い時期に嘔吐をおこし外科的な治療が必要です。