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肝胆膵外科 – 膵癌 – 膵癌とは

膵臓の腫瘍の分類

膵臓の腫瘍のほとんどは膵管上皮から発生し、浸潤性膵管癌、膵管内腫瘍、粘液性嚢胞腫瘍、漿液性嚢胞腫瘍、内分泌腫瘍などに分類されます。

〈A〉浸潤性膵管癌

いわゆる膵癌で、膵悪性腫瘍の大半を占めます。世界的に増加傾向にあります。わが国の死亡数は、男性では第5番目、女性では第6番目に多い癌です。1年間に全国で約20,000人が膵癌になっています。消化器癌のなかでも、治療が容易でない癌の代表格で、発見されたときにはすでに手術で取り除くことができないか、手術で取り除いても後に再発・転移することもあります。

〈B〉粘液性嚢胞腫瘍

膵臓に嚢胞(内部に液体が貯留した袋状のできもの)を作る腫瘍にはこの粘液性嚢胞腫瘍と漿液製嚢胞腫瘍、さらには膵管内腫瘍(粘液産生腫瘍)と呼ばれるものがあります。粘液性嚢胞腫瘍は中年女性に多く、嚢胞内に多量の粘液を貯留しています。将来癌化する可能性が高いといわれています。大きさや形の変化に注意しながら経過観察し、症状が出たり癌化が疑われる場合には手術が必要です。

〈C〉漿液性嚢胞腫瘍

多数の小さな嚢胞の集まりでできていることが多く、内容は漿液(さらさらした液体)で、癌化することは稀です。

〈D〉膵管内腫瘍

高齢男性に多く、膵管内に発生した腫瘍から粘液が多量に排出されます。膵管が種々の程度、部位で拡張を呈するのが特徴です。悪性化(癌化)することがありますが、変化は比較的ゆっくりであるため、大きさや形の変化に注意しながら、経過観察することができます。症状が出たり癌化が疑われれば、手術の対象となります。

〈E〉内分泌腫瘍

インスリンやグルカゴンなど、ホルモンを産生する細胞から発生する腫瘍で、分泌されるホルモンの種類や量によって様々な症状が現れます。インスリンを多量に分泌するインスリノーマという腫瘍の場合には、低血糖発作が症状の中心となります。ホルモンを分泌しない場合もあります。良性と悪性に分けられますが、その区別は容易ではないので、特に1cmを超える場合は症状がなくても外科的に切除することが望ましいと考えられます。

膵臓癌の症状

膵臓の位置、構造の項で述べたように、膵臓、ことに、膵頭部に病気が存在すると、膵管、胆管、場合によっては十二指腸が影響を受けます。つまり、膵管狭窄によっては膵液がうっ滞して膵炎による腹痛が出現したり、胆管狭窄によって胆汁がうっ滞して黄疸を発症したり、十二指腸狭窄によっては食物や胃液がうっ滞して食欲低下や嘔吐などの症状が現れます。逆に膵臓の体部や尾部ではこれらの症状が出にくく、発見が遅れがちになります。また腫瘍の影響で膵臓からのインスリン分泌が低下することがあるため、初めて糖尿病と診断されたとき、あるいは糖尿病が急に悪化した場合には注意が必要です。

膵臓癌の診断法

膵癌の診断には様々な画像診断を組み合わせています。腹部超音波検査やCT、MRIなど患者さんへの苦痛の少ない検査からはじめ、必要に応じて内視鏡を用いた膵胆管造影検査、血管造影検査などを行います。また血液検査では、血清および尿中アミラーゼ、リパーゼなどを測定します。また、膵癌の腫瘍マーカーには、CA19-9、CEA、エラスターゼ1、Dupan-2などがあります。

治療法の詳細は『慈恵医大外科での治療と成績』をご覧下さい。