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上部消化管外科 – 逆流性食道炎 – 逆流性食道炎Q&A

Q1 GERDと逆流性食道炎は違いますか?

A1 GERDには、逆流性食道炎があるものと、食道炎ははっきりしないものの逆流が原因となって胸やけなどの症状があるものとの両方が含まれます。内視鏡で実際に食道炎が認められる場合を‘逆流性食道炎’と呼ぶのに対して、逆流が原因となる症状があるものの、内視鏡で食道炎が認められない場合を、‘非びらん性胃食道逆流症’と呼びます。英語では‘Non-erosive reflux disease’と記され、その頭文字をとってNERD(ナード)とよぶこともあります。日本人のGERDの70%はNERDと考えられています。

Q2 胸やけとはどんな症状ですか?

A2 胸骨(胸の中央にある約15 cmくらいの縦長の骨)の後ろが焼けるように感じることです(灼熱感)。痛み(胸痛)をともなうこともあります。

Q3 24時間食道内多チャンネルインピーダンス・pH測定検査とはどのような検査ですか?

A3 2~3 mm程の細い管を鼻から胃まで挿入して、24時間逆流の状態をコンピュータに記録します。胸やけや胸痛、逆流感などを感じたときなどに器械のボタンを押していただきます。この検査により、①食道に胃酸が逆流している時間の測定、②逆流の中でもっとも長く逆流している時間の測定、③1回の逆流が5分以上続く逆流回数、④胃から食道へ液体や気体(ガス)が逆流する回数ならびに逆流している液体や気体が酸性なのかどうかが分かります。

Q4 24時間食道内多チャンネルインピーダンス・pH測定検査と食道運動機能検査はいつ行いますか?

A4 通常手術を行う前と、術後約3ヶ月経過してからの計2回ずつ行います。術後の検査は、手術の効果の判定のために行います。この結果により、お薬の服用の必要性を判断します。

Q5 手術の適応がよくわからないのですが。

A5 プロトンポンプ阻害薬が効果的であるため、いきなり手術ということはありません。しかし長期にわたり内服を続ける必要がありますので若い患者さんには手術をおすすめしています。また短食道(炎症が原因で食道が短くなる)や食道狭窄(炎症が原因で食道が狭くなる)といった合併症を併発すると手術の難しさが格段に高まります。食道を切除しなければならない患者さんも出てきます。このような合併症を併発する以前に手術を行うべきです。当院における手術適応を以下にまとめました。

1.手術を強く勧めるケース
 ・逆流により肺炎や咳などの呼吸器症状を認める
 ・プロトンポンプ阻害薬で治らない
 ・若い人(概ね40歳以下)
 ・短食道や狭窄などの合併症を併発した人
 ・upside-down-stomachの患者さん

2.手術を勧めるケース
 ・プロトンポンプ阻害薬をやめると症状や食道炎が再発する
 ・胃酸以外の原因で症状や食道炎が認められる
 ・くすりの飲み忘れが多い
 ・バレット食道*を合併した人

*バレット食道とは、食道粘膜の表面が、胃や腸の粘膜に似た状態に置き換わってしまったことを言います。逆流性食道炎の合併症とも言われており、逆流性食道炎を治療しなかったことが要因とも考えられ、さらに放置しますと、食道がんを引き起こす可能性があります。

Q6 手術時間はどのくらいですか?また入院期間はどのくらいですか?

A6 通常、手術の1~2日前にご入院いただきます。手術は2時間30分から3時間くらいで全身麻酔で行います。術後の入院日数は7日程度です。

Q7 手術の危険性はどのくらいありますか?

A7 逆流性食道炎や食道裂孔ヘルニアに対する腹腔鏡下手術における死亡例はありません。手術自体の安全性は高いのでご安心ください。  なお、慈恵医大附属病院の関連施設を含めたこれまでの成績をまとめると、はじめて腹部の手術をする患者さんでは0.8%(623人中5人)が腹腔鏡下手術から開腹手術への変更が必要でした。

Q8 術後は何か別の症状がでますか?

A8 最も代表的なものは嚥下困難(つかえ感)です。これは、手術の際に胃で食道を巻きつけるために起こります。この症状はほとんどの方に出現しますが、1ヵ月でかなり改善し、おおよそ3ヶ月程度で消失するのが一般的です。それでも改善しないときには、内視鏡を用いてバルーンで拡張をすることもあります。

Q9 手術後どのくらいで仕事ができるようになりますか?

A9 当院での手術は腹腔鏡下手術であり、体の回復がきわめて早いことが特徴です。そのため退院後は1週間程度で職場に復帰することが十分に可能です。基本的には患者さんが復帰可能と判断されたときで構いません。

Q10 術後の再発の危険性や再手術の可能性はどうですか?

A10 概ね10%程度に再発が認められており、その場合はまずお薬による治療を行います。再発や嚥下困難による再手術率は約1%です。

Q11 食道癌になることはないのですか?

A11 流性食道炎と食道がんはきわめて密接な関係にあります。食道粘膜はもともと重層扁平上皮という組織からできています。しかし食道炎を繰り返すうちに食道の上に胃の粘膜である円柱上皮が発生するようになります。この状態をバレット食道といいます。バレット食道は発癌の危険因子としてとても有名です。欧米の食道がんの患者の50%以上がバレット食道がんです。日本ではバレット食道がん患者はまだまだ少数ですが、注意深く経過観察する必要があります。

(2021年2月更新)