小児外科 ヒーローイメージ
主な疾患と治療法 慈恵医大小児外科の臨床上の特色 学生・研修医の皆さんへ スタッフ紹介 関連派遣施設 研究 実績 業績 外来担当医表

小児外科

 慈恵医大小児外科で最も古い手術は、記録上では1942年に12歳の男児に腰椎麻酔下で行った腸間膜裂孔小腸嵌頓の腸閉塞症に対する内ヘルニア修復術です。2001年4月に外科が大講座制となり、小児外科は7診療班の1つになりました。同年11月に本邦で初めて大学内に母子医療センターとして「総合母子健康医療センター」が開設され、2020年12月には、「東京都総合周産期母子医療センター」の指定を受け、その中で、小児外科は小児外科疾患の専門的高度医療を実施しています。

 小児外科では新生児(出生前診断)から15歳以下の小児が対象ですが、呼吸器・消化器疾患に加え、小児の泌尿器や婦人科の外科的疾患の手術も行っています。また、小児外科疾患の手術後の患者さんで成人に達している方々の定期診療や、15歳以降でも小児外科が取り扱っている疾患の患者さん(漏斗胸など)や小児科で治療を受けている心身障害児(者)に対する手術(胃食道逆流症に対する噴門形成術や胃瘻造設など)も行っています。現在のメンバーは、日本小児外科学会指導医1名、専門医7名と若手スタッフ5名の計13名で、本院以外では、附属病院である柏病院、葛飾医療センター、第3病院(非常勤)に加え、各関連施設にもスタッフを派遣し、小児外科専門診療を行っています。また、他学(東京都立小児医療センター小児外科、埼玉県立小児医療センター小児泌尿器科)へ各1名、海外留学へ1名派遣中です。本院は日本小児外科学会認定施設であり、柏病院、葛飾医療センター、関連施設の川口市立医療センター、町田市民病院は日本小児外科学会教育関連施設に認定されています。

 外科学講座は大講座制であり、若手小児外科医の教育は、3年間の一般・成人外科医としての後期レジデントとしての研修を行い、外科手術の基本を身に着けてから、小児外科の修練に入ることになります。このローテーション制度は小児外科医を目指す若手医師からも人気で、成人外科で多くの経験を積むことが、小児外科医としても貴重な経験となります。 小児外科の修練に入ると、本院や上記教育関連施設をローテーションし、その間に小児病院への国内留学や希望者は海外留学も選択することができ、専門医、指導医取得に向けて修練を積みます。

 2024年4月から始まる医師の働き方改革としての医師の時間外労働上限規制に対応するため、慈恵医大小児外科ではチーム医療を重視しています。そのため、分院や関連病院でより専門的な集約的治療が必要な場合は本院で手術を含めた治療を施行し、病状が安定後は紹介施設で治療を継続するという連携が取れるのも特徴です。

外科学講座 小児外科 集合写真

主な疾患と治療法

慈恵医大小児外科の臨床上の特色

1. 出生前診断から診療に携わり、超低出生体重児を含めた新生児の治療の経験が豊富

 妊娠中から分娩時期や分娩方法、出生後からの治療について新生児科と連携して計画的に行うことで治療成績も向上しています。2015年には新生児科、麻酔科、産科、看護部、手術部をはじめとする関連各科の協力を得て先天性気管閉鎖の患者に対してEXIT(帝王切開による分娩時に臍帯の血行を保ちながら胎児に処置を行う手技のこと)による気管切開に成功しました。また、500g前後の超低出生体重児の肺や腸管の手術も可能となり、超低出生体重児に対する手術はNICU内で迅速に行える体制を取っています。

2. 鏡視下手術の積極的導入

 鏡視下手術を早くから取り入れています。日本内視鏡外科学会技術認定医が治療に携わり、多くのスタッフが慈恵医大式鏡視下手術のライセンスを持っています。

3. 東京都小児がん診療病院

 小児がんに関して高度な診療提供体制を有する医療機関として「東京都小児がん診療病院」に認定されています。小児外科では、小児科の血液腫瘍班や病態によっては成人外科や他科とも連携・協力して、小児固形腫瘍(神経芽腫・ウイルムス腫瘍・肝芽腫・その他の軟部組織腫瘍など)に対しても、最良の治療を提供出来るような体制を取っています。

4. 専門外来(漏斗胸・胸郭変形、舌小帯、消化管機能、出生前診断、小児泌尿器)の開設

 漏斗胸、舌小帯短縮症、小児泌尿器科疾患などは経験豊富な小児外科医が専門外来で担当しています。漏斗胸に対する治療(手術)実績は約20年間に約600例のNuss手術を経験しており、国内有数で、近年の年間手術数は約30~40例前後で推移しています。豊富な経験に基づき、手術方法にも年々改良を加え、より安全で、より高い治療効果を目指しています。舌小帯短縮症に対する治療では手術適応を厳格にし、更に、術前後のリハビリテーションを加えることで、年齢、成長に合わせた治療を提供しています。小児泌尿器科疾患は、病態が複雑で、また、長期に経過を診ていく疾患が多く含まれます。日本小児泌尿器科学会認定医が診療に携わり、小児泌尿器を専門とする小児外科医と小児科医が連携し、対応しています。嘔吐や便秘といった症状で来院する子どもに対し、消化管機能外来では、食道インピーダンスpHモニタリング検査、直腸肛門内圧反射検査、直腸suction biopsy検査、造影検査などに精通した小児外科医が診断と治療を行います。

学生・研修医の皆さんへ

 外科医の使命は患者さんの身体にメスを加えて、患者さんの生命・健康の改善を図ることで、それゆえ、高い技術、責任感、そして誇りが求められます。そして、病気で苦しんでいる子供が手術を受け、その後、病気に負けずに成長していく過程や笑顔を見ることが、他では得られない、我々小児外科医に取って最高の喜び・やりがいです。慈恵医大小児外科では医療を受ける患者さんのみならず、その提供者である医療従事者にとってもより良い環境を実現できるように、また、小児医療に情熱を持った小児外科医の育成に努めています。我々の未来を担う子ども達の医療に関われることの喜びや誇りを一緒に感じましょう。

スタッフ紹介

診療部長

黒部 仁(准教授)

  • 日本外科学会専門医・指導医
  • 日本小児外科学会専門医・指導医・評議員
  • 日本小児泌尿器科学会認定医
  • 日本消化器外科学会専門医・指導医
  • 日本内視鏡外科学会技術認定医(小児外科)・評議員
  • 鏡視下手術慈恵医大式Step3ゴールドライセンス
  • 日本周産期・新生児学会認定外科医・評議員
  • Fellow of American College of Surgeons(FACS)
  • 2003年〜2005年 Stanford大学留学

診療医員

大橋 伸介(助教・外科副医局長)

  • 日本外科学会専門医
  • 日本小児外科学会専門医・評議員
  • TNT (Total Nutritional Therapy) certificate
  • 臨床研修指導医
  • 鏡視下手術慈恵医大式Step3ゴールドライセンス
  • 2005年〜2007年 UCSF留学

馬場 優治(助教)

  • 日本外科学会専門医
  • 日本小児外科学会・評議員
  • 鏡視下手術慈恵医大式Step 3ゴールドライセンス

平松 友雅(助教)

  • 日本外科学会専門医
  • 日本小児外科学会専門医
  • SIOP member
  • 鏡視下手術慈恵医大式Step 3ゴールドライセンス
  • 2018年 Sydney大学公衆衛生大学院 PhD
  • 2019年〜2022年 The Children’s Hospital at Westmead, Clinical fellow in Paediatric General Surgery
  • 2023年〜 Perth Children’s Hospital, Clinical fellow in Paediatric General Surgery

金森 大輔(助教)

  • 日本外科学会専門医
  • 日本小児外科学会専門医
  • 鏡視下手術慈恵医大式Step 3ゴールドライセンス

内田 豪気(助教)

  • 日本外科学会専門医
  • 日本小児外科学会専門医
  • 日本小児泌尿器科学会所属
  • 鏡視下手術慈恵医大式Step3シルバーライセンス

梶 沙友里(助教)

  • 日本外科学会所属
  • 日本小児外科学会所属

原田 篤(助教)

  • 日本外科学会専門医
  • 日本小児外科学会専門医
  • 日本小児泌尿器科学会所属

杉原 哲郎(助教)

  • 日本外科学会専門医
  • 日本小児外科学会専門医
  • 日本小児泌尿器科学会所属
  • TNT (Total Nutritional Therapy) certificate
  • 鏡視下手術慈恵医大式Step3シルバーライセンス

宮國 憲昭(助教)

  • 日本外科学会所属
  • 日本小児外科学会所属
  • 日本大腸肛門病学会所属
  • 鏡視下手術慈恵医大式Step 3シルバーライセンス

川谷 慶太(助教)

  • 日本外科学会所属
  • 日本小児外科学会所属
  • 鏡視下手術慈恵医大式Step 2

広原 和樹(助教)

  • 日本外科学会所属
  • 日本小児外科学会所属

永嶌 惇(助教)

  • 日本外科学会所属
  • 日本小児外科学会所属

非常勤医師

芦塚 修一

  • 日本外科学会指導医・専門医・評議員
  • 日本小児外科指導医・専門医
  • 日本内視鏡外科学会技術認定医(小児外科)
  • 鏡視下手術慈恵医大式Step3ゴールドライセンス
  • 日本周産期新生児外科学会認定外科医
  • Nuss法漏斗胸手術手技研究会 世話人

関連施設

※外来日は急遽変更になることもございますので受診前に各施設にお問い合わせください。

慈恵医大附属柏病院(千葉県柏市柏下)

 外来日:毎週木曜  担当医師:馬場 優治

慈恵医大葛飾医療センター(東京都葛飾区青戸)

 外来日:毎週月曜  担当医師:金森 大輔

慈恵医大第三病院(東京都狛江市和泉本町)

 外来日:毎週木曜午後  担当医師:宮國 憲昭

川口市立医療センター(埼玉県川口市西新井宿)

 外来日:毎週月曜午後・水曜午後  担当医師:原田 篤,黒部 仁

町田市民病院(東京都町田市旭町)

 外来日:毎週水曜午後  担当医師:大橋 伸介

新百合ヶ丘総合病院(神奈川県川崎市麻生区)

 外来日:毎週火曜,第4土曜午前  担当医師:宮國 憲昭

西埼玉中央病院(埼玉県所沢市若狭)

 外来日:第2,4火曜午後   担当医師:黒部 仁

総合高津中央病院(神奈川県川崎市高津区)

 外来日:第1,3火曜午後   担当医師:大橋 伸介

富士市立中央病院(静岡県富士市高島町)

 外来日:毎週木曜午前  担当医師:大橋 伸介,内田 豪気

汐見台病院(神奈川県横浜市磯子区汐見台)

 外来日:第3金曜午後  担当医師:梶 沙友里

曳舟こどもクリニック(東京都墨田区京島)

 外来日:第1,2,4週土曜午前   担当医師:黒部 仁,金森 大輔

東京都立北療育医療センター(東京都北区十条)

 外来日:第1,3週金曜午前   担当医師:宮國 憲昭

緑ヶ丘小児科(千葉県八千代市)

 外来日:月,火,木,金,土曜午前   担当医師:芦塚 修一

研 究

基礎研究

1. コイン形電池誤飲に関する基礎研

 乳幼児のコイン形電池誤飲は重篤な合併症(食道気管瘻)を引き起こすことが知られており、迅速な診断と治療が必要です。企業と連携し、粘膜障害のメカニズムの解明及び、誤飲しても消化管への障害が起こりにくい電池の開発(ブタを用いた生体実験)を行っています。

2. ブタ胎児小腸、及び、オルガノイドを用いた腸管再生の基礎研究

 腸管神経の欠損または異常が原因となるHirschsprung病やその類縁疾患は国の指定難病であり、新規治療法の開発のための基礎実験を行っています。

臨床研究

1. 漏斗胸に対するNuss法の改良と術後評価(特に左右非対象症例)

漏斗胸に対する手術としてNuss法は標準手術となっていますが、手術による効果をより改善するために手術方法を改良しています。挙上効果について分析を行い、更なる治療成績に向上につなげます。

2. 術後SSI防止のための手術野の至適消毒方法や縫合糸の検討

術後合併症の1つであるSSIは入院期間や外来通院時間の延長、治療に伴う医療費の増加、および、患児とその家族のQOLへ影響を及ぼします。SSIを限りなく減らすため、SSIと消毒方法、縫合糸との関係を検討しています。

実 績

東京慈恵会医科大学附属病院 総合母子健康医療センターホームページをご覧ください。

業 績

Masashi KUROBE

Shinsuke OHASHI

Tomomasa HIRAMATSU

Yuji BABA

Daisuke KANAMORI

Goki UCHIDA

Sayuyri KAJI

Atsushi HARADA

Tetsurou SUGIHARA

Kazuaki MIYAGUNI

Kazuki HIROHARA

Keita KAWATANI

Atsushi Nagashima