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胸部大動脈瘤とは? どんな症状があるの? どういう人がこの病気にかかるの? 胸部大動脈瘤と言われたら?
血管外科 – 胸部大動脈瘤 – 胸部大動脈瘤とは

胸部大動脈瘤とは?

 胸の大動脈がこぶ状に拡大する病気です。できる場所によって上行、弓部、下行大動脈瘤、胸腹部大動脈瘤などに分かれます。胸腹部大動脈瘤は治療が複雑であり手術リスクも高いので別に胸腹部大動脈瘤の項で説明します。大動脈瘤ができる原因は先天的な要因と後天的な要因(主に動脈硬化)があり、感染や外傷が原因で起こる事もあります。瘤の形態から嚢状瘤(一部分のみ膨れる)と紡錘状瘤(全体的に均一に膨らむ)に分かれます。一部分の壁が引き延ばされた嚢状瘤の方が破裂のリスクは高くなります。

どんな症状があるの?

 症状が出る事は稀ですが、弓部大動脈瘤などの一部の瘤では、瘤が声帯をつかさどる神経を圧迫することで、声帯麻痺を引き起こし、嗄声(声がかれる事)という症状が出る事があります。また、胸痛は動脈瘤が破裂しかかっているサインになります。

 このように症状に乏しい動脈瘤ですので健診のレントゲンやCTなどにより偶然に発見されることが多いです。

どういう人がこの病気にかかるの?

 元々、動脈硬化が原因となるので高血圧、糖尿病、喫煙などがリスク因子となります。また、大動脈の経年劣化が原因の病気ですので高齢者に多いです。家族に大動脈瘤の破裂歴がある方は破裂のリスクが他の方と比較して高いです。

胸部大動脈瘤と言われたら?

 一番怖いのは破裂ですので治療の目的は破裂の予防となります。破裂した場合の致死率は非常に高い病気ですが、手術に際しても一定のリスクがあるので発見された時点ですぐ手術を勧めるような対応は適切とは言えません。まずはご自身の動脈瘤の大きさや形態などを把握して破裂の危険性がどの程度あるか評価する必要があります。その上で手術リスクと放置した場合の破裂リスクを評価し、相対的に手術リスクの方が低いと判断した場合は手術をお勧めしております。手術リスクとしては、心疾患や脳梗塞、慢性腎不全や透析の患者、またステロイドの内服中の患者はそのリスクは高くなると言われております。また、血管内にプラーク粥腫(血管内のコレステロール沈着)が多数に付着している方は脳梗塞を発症するリスクが高くなると言われております。

 胸部大動脈瘤が疑われた場合、大きさや形態を調べるために造影剤を用いたCT検査を行います。動脈瘤破裂の危険因子はまずその大きさ(直径)です。直径5.5~6.0cm以上で手術適応と言われてます。また、急速に拡大傾向(半年で5mm以上拡大)のあるもの、痛みなどの症状を伴うものは破裂しやすいとされております。形態的に嚢状の瘤は破裂しやすいとされています。その他、女性、高血圧、喫煙者、閉塞性肺障害(COPD)を有するほうが破裂しやすいといわれています。これらを総合的に判断して手術の適応を考えます。小さい動脈瘤の場合は定期的にCTで観察し、前述した手術適応を満たした時点で治療を行います。