操縦席の窓から(一般公開用)
操縦席の窓から

3年前のタクシー
2021.05.18

追憶

スマホの中の写真を振り返っていたら、ちょうど3年前の出来事を思い出しました。
京都で大きな学術集会があり、東京に戻る最終日。伊丹空港を経由して飛行機で帰京する段取りをしていたのですが、会場で想定外に時間を使ってしまいました。国立京都国際会館から地下鉄で京都駅に辿り着いた時には、フライトに間に合う伊丹空港行きのリムジンバスは出発してしまった後。

予約変更のできない航空券だったので、タクシーで伊丹空港に向かうことを決意。バス乗り場の近くにあるタクシー乗り場から個人タクシーに乗り込んだところ、運転手さんは「え? 伊丹空港ならそこのバス乗り場からバスが出てますよ。」と商売っ気のない返事。
次のバスを待っていては間に合わないので空港に向かってほしいことを伝えると、「いや~、私、30年間京都でタクシードライバーやってますけど、京都駅から伊丹空港まで乗るお客さん、あなたで2人目です(笑)」

そう言われると、1人目の方はどんな方だったのかちょっと気になりますね。

「下道で行きます? 高速で行きます?」

え・・・、前を行くリムジンバスは高速道路を走ってるんだから、下道というチョイスはないですよね・・・

京都南インターから名神高速道路に入ったところ、運転手さんは衝撃的な一言を発しました。

「この先はもう道がわからないので、教えていただけますか?」

ほんまに30年間タクシードライバーやってはりますの?

と、思わず問いたくなります。

昔リムジンバスに乗った時の記憶とGoogle先生に頼りながら、経路を運転手さんに伝えていきました。といっても名神高速道路を道なりに走っていくだけなのですが、この運転手さんの天然なノリでどこか一か所でも間違えられると即アウトになりますので、ジャンクションを通過するごとに結構な緊張感がありました。

まさにその車中から

空港の最寄りのインターチェンジが近づいてきて胸をなでおろしていたのも束の間。なぜか追い越し車線側を走行している運転手さん。

「あの・・・、もう下りないといけないので、左に寄ってください。」

「ウソ?」

さっきから看板に「伊丹空港」って書いてあるやん・・・

インターチェンジを降りてからも油断ならないので、事細かに経路を指示してターミナルビルまで誘導しました。

「お客さん、ずいぶん詳しいじゃない(笑)」

お金をお支払いすると、「今日はこれで仕事終わり。下道でゆっくり帰らせてもらいますよ~」と満面の笑みで語られました。

保安検査場は締め切り時刻ギリギリに通過し、無事に東京に帰り着きました。
どこかコミカルで、心に残るタクシー運転手さんでした。

京都で学会なんて、夢のまた夢のように感じてしまう今日この頃。
また皆で遠方に出かけられるような日々が戻ってくるといいですね。

帰路の機窓より
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