操縦席の窓から(一般公開用)
操縦席の窓から

JESの夏
2021.08.22

随感随筆

JESの夏。血外の夏。日本の夏。

今年も血管外科の先生方がJES(Japan Endovascular Symposium)を主催されました。私たちの医局ではまさに夏の風物詩とも言うべきイベントであり、個人的にはJESが来ないと夏が来た気がしません。言うなれば、一般国民の皆様における24時間テレビのような存在でしょうか。

私は研修医時代に血管外科をローテーションしたことがありつつ、JESにも主催者側のお手伝いとして参加させていただいたことがある血外チルドレン(自称)ですので、JESに対する思い入れは普通の医局員の先生方よりも強いほうだと自負しております。今回も極力時間を割いて視聴するようにしておりました。

現地開催だった平時は日程が2日間とも平日でしたので、本院勤務であってもなかなかゆっくり参加することはできませんでしたが、今年も昨年に引き続いて土日にWebで開催していただけたことで、充実したひと時を過ごすことができました。

もちろん、血管外科医でない私が参加することに意味があるのか?というご指摘はあろうかと思いますが、全国の大動脈疾患の急性期医療の現状についての理解は深まりましたし、血管外科の先生方が日頃どのようなテーマに取り組まれているかを知ることもできて、非常に有意義な内容でした。何より、

・一見シンプルに見える症例でも、思わぬ落とし穴がある
・体内にカテーテルを留置する際は、画像での位置確認を怠らない
・抜けなくなったデバイスは、慌てて抜いてはいけない

といった基本的なことの重要さも、一人の外科医として身に染みるように実感しました。画面を通して伝わってくる全国の先生方の活気溢れる表情にも、元気をいただいたような気がします。診療部の特性上、緊急手術に関与することが少ない身としては、昼夜を分かたずスタンバイしている全国の“勝負師”たちに、心からの敬意を表さずにはいられません。

全20セッション22時間に渡る討議は、まさに歯に衣着せぬ物言いが飛び交う“舌戦”。全国の全分野の学術集会の中でも、これほどまでに本音をぶつけ合うディスカッションはないと思います。録画なし・後日配信なしの“一発勝負”であることは、議論の活性化に一役買っているのかもしれません。

国内外の血管外科診療を牽引していると言っても過言ではない慈恵医大血管外科は、外科学講座の精神的な支柱の一つであると私は思っています。そういう先生方のサポートをいつでも受けられる環境にいられることのありがたさを、これからもかみしめていきたいものです。
もちろん他の6つの診療部の先生方もそれぞれが先進的な取り組みを行われており、いつでも各分野の“最先端”にアクセスできるところが、大講座制のメリットですね。

大木先生、血管外科の先生方、大変お疲れ様でございました。“隠れJESファミリー”として、また来年もアツい夏が訪れることを、心から楽しみにしております。

大木教授による閉会の挨拶
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