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肝胆膵外科 – 肝硬変・肝不全 – 肝硬変・肝不全とは

肝硬変

肝硬変の特徴

肝硬変の定義は、病理学的なもので、慢性の肝障害により肝細胞の再生と結合織の増生が生じ、びまん性に肝臓全体に線維性隔壁に囲まれた再生結節(偽小葉)が形成された状態をいい、簡単にいえば、線維性の占める部分が多くなり、肝臓が硬くなった状態です。

ここに肝細胞癌が発生し易いことは、肝細胞癌の項で触れましたが、その他、腹水・胸水が貯留したり、アンモニアの代謝ができずに、肝性脳症という意識障害を合併したりします。また、食道・胃静脈瘤を合併し消化管出血の原因になったりします。簡単にいえば、血流が塞き止められて、別のルートに流れるようになり、そこで静脈瘤が形成されます。この別のルートの好発部位に食道・胃があるということになります。

基本的には、肝硬変は内科にて治療することが多いのですが、食道・胃静脈瘤の治療は、以前は外科的な治療をしていましたが、現在は内視鏡的な治療が主流となっています。また血管造影の手法でカテーテルを使用したアプローチもあります。これらの治療については、当院では、内科でも外科でも内視鏡科および放射線科と協力し行っています。

内視鏡的治療は、静脈瘤を輪ゴムみたいなもので結紮する内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)と、硬化剤を注入し硬くしてしまう内視鏡的硬化療法(EIS)を併用しています。また胃静脈瘤で、内視鏡的治療が困難な場合、また腎臓と胃の間に側副血行路(新たな血行路)がある場合、直接胃静脈瘤に硬化剤を注入するバルーン下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)と呼ばれる治療をしています。また、胃静脈瘤に対して脾臓を摘出し(血小板が上昇)し、食道下部および胃上部の血管を郭清することによるハッサブ手術も行い、良好な成績を得ています。また、利尿剤などの内科的治療に反応しない難治性の腹水・胸水に対して、デンバーシャントという手術も行っています。これはタンクのついたチューブにて腹水を鎖骨下静脈などに灌流することにより、液体貯留による圧迫症状を軽減する方法です。

肝不全

肝不全の特徴

肝は体内最大の代謝器官であると同時に細網内皮系に属し、このため自己防御機構の中心的役割を担っています。肝不全ではこれらの機能が破綻し、肝臓の機能維持が困難となり意識障害、黄疸、腹水や消化管出血などが発生する症候群です。また肝不全は肝腎症候群・肝肺症候群などに代表される他臓器に障害を引き起こし、多臓器不全へと進展する重篤な疾患です。

肝不全の分類

肝不全は急性肝不全(主に劇症肝炎)と慢性肝不全(主に肝硬変)に分類することができます。急性肝不全とは正常肝に急激におこる広範肝壊死と肝機能障害の結果、肝不全症候が出現するまでの期間が6ヶ月以内のものとされています。また慢性肝不全は慢性肝障害の終末像であり、慢性肝疾患(多くは肝硬変やそれに合併した肝細胞癌症例)を基盤として肝不全症候を呈するものです。

治療法の詳細は『慈恵医大外科での治療と成績』をご覧下さい。