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上部消化管外科 – 食道アカラシア – 食道アカラシアQ&A

Q1 わたくしは紡錘型のアカラシアと診断されています。手術は受けたほうがいいのでしょうか?それとももっと悪くなってからでもいいのでしょうか?

A1 手術を受けて頂くかどうかは基本的には患者さんに決定して頂きます。しかし(1)アカラシアは長期的にみれば進行性の疾患である、(2)病気が進行していくにつれて食道運動機能が低下していく、(3)病態(病気の進行度のこと)が軽い患者さんのほうが進んだ患者さんと比較して、手術後の症状の改善が明らかに優れている、(4)よく効く薬がない、などの理由から手術をお勧めしています。

Q2 手術時間はどのくらいですか?また入院期間はどのくらいですか?

A2 手術の前々日にご入院して頂きます。手術時間は約2時間30分くらいで全身麻酔で行います。術後の入院日数は通常4日です。

Q3 手術後どのくらいで仕事ができるようになりますか?

A3 当院での手術は腹腔鏡下手術であり、体の回復がきわめて早いことが特徴です。そのため退院後はすぐに職場に復帰することが可能です。ただし、重労働をされる方はこの限りではありません。

Q4 手術の危険性はどのくらいありますか?

A4 アカラシアに対する腹腔鏡手術の死亡例はありません。術中の粘膜損傷は約15%に認められておりますが、いずれも腹腔鏡下に修復されています。また腹腔鏡手術における開腹移行は3人のみときわめて低くなっています。

Q5 症状はすべてなくなるのでしょうか?

A5 アカラシアの症状は、下部食道が開かないために生じる通過障害によるものです。つかえ感、嘔吐、逆流(特に仰臥位や夜間の逆流)、咳などの症状は術後早い段階から改善します。しかし、食道運動障害自体は改善しませんので、早食いや大食いを行うとつかえ感がでることがあります。また、食事内容によっては、水分を補給する方が、流れが良くなります。アカラシアの症状で、胸痛は食物の停滞によるものではありませんので、術後にも見られることがあります。改善することも少なくありませんが、時には、術後早期に増強することがあります。術後長期経過では軽減してきます。

Q6 拡張術は若いひとには効果が薄いと聞きますが、本当でしょうか?

A6 拡張術は、一般的に高齢の方では効果が期待できると考えられております。これは加齢に伴い筋肉の弾力性が損なわれていくことから、機械的に押し広げられた筋肉がもとに戻りにくいからと考えられています。一方、若い方(特に40歳未満)では拡張後早期においては症状の改善が得られる方もおられますが、比較的早くもとの状態に戻ってしまうとされ、頻回に拡張術を受けなければならない可能性がございます。注意すべき点は、拡張術を繰り返し行われており、いざ手術療法が必要となった場合、手術操作が難しくなる、合併症の発生率が上昇するとされていることです。また、当院の検討にて若年者の方では、2度以上拡張術を行った場合、術後の症状改善の程度が低下することが分かっております。このため、当院では拡張術を一度受けられて症状の再燃をきたしてしまった方には手術をお勧めしております。

Q7 手術を受ける場合、どのような検査を行うのでしょうか?

A7 まず、手術は全身麻酔にて行いますので、全身麻酔を受ける際に必要となる人間ドックで行うような血液検査、尿検査、レントゲン検査、心電図検査や呼吸機能検査を受けていただきます。その他、通常はアカラシアの病状を知るために食道造影検査(TBE)、胃カメラ、食道運動機能検査や胸部CT検査を行わせていただいております。手術後は血液検査やレントゲン検査を受けていただき、術後しばらくしてからは食道造影検査(TBE)、食道運動機能検査および胃カメラを受けていただいております。

Q8 最近では単孔式手術(SILS)という手術方法があると聞きました。この方法で手術をしていただけるのでしょうか?

A8 当院ではSILS+1という、臍の部分と1箇所の傷で行う手術を行っております。手術の詳細はホームページにお書きしております。当院におきましても最近、積極的に導入している手術手技であります。患者さんの病状により施行可能か判断させていただいておりますので、ご希望される場合はご相談ください。

Q9 手術を受けたあとは定期的に外来を受診しなければならないのでしょうか?

A9 はい。可能な限り、定期的に外来を受診していただいております。術後1年経過した方は年1~2回の通院となります。ただし、遠方より手術を受けに来院されている方もいらっしゃいますので、通常はご自宅の近くなど通院しやすい病院で経過を見ていただき、必要時に来院していただいている方もおられます。たとえ調子がよろしくてもアカラシアの方は食道癌発生のリスクがアカラシアではない方とくらべやや高いとされておりますので、定期的な胃カメラはお勧めしております。

Q10 手術をしても再発する可能性はあるのでしょうか?

A10 アカラシアの手術後に症状が再燃する可能性はあります。他の施設で手術を行われたあと、症状が変わらない、再燃したとして当院で再手術を行わせていただいた方はいらっしゃいます。筋肉の切開が不十分であったことや、切開した筋肉が再癒合してしまったことが原因として考えられます。当院ではこれらをふまえ長めの筋肉の切開、再癒合を防止するためにブジーを用いて手術を行う、および切開した部分の筋肉を一部切除するなどの工夫をしております。

Q11 POEMは慈恵医大でも受けることができるのでしょうか?

A11 はい。これまで当院ではPOEMを行うことができませんでしたが、当大学の倫理委員会の承認も得て2016年1月よりPOEMを当院で正式に行うことが可能となりました。安全な治療を患者さんに提供するために時間がかかりましたが、これでアカラシア治療を行う上で幅広い視野から最適の治療を選択し、かつ患者さんに提供できるものと期待しております。

(2024年3月更新)