操縦席の窓から(一般公開用)
操縦席の窓から

キャビンの窓から・前編
2022.01.01

飛行機

年始2日間の帰省を航空・鉄道ファンの視点でまとめてみました。まずは初日の飛行機からまいります。

元旦の5時頃に自宅を出発し、羽田空港へ。

6時過ぎには到着しましたが、既に手荷物カウンターや保安検査場は大混雑。ガラガラだと思っていたので、面喰いました。

早朝に空港に来るたびに、空港で働いている方々は一体何時に家を出発されているのかなと思います。そして、売られているお弁当は一体何時に作られたのだろう、そのお弁当を作っている方々は・・・ 社会というものは、色々な人の支えで成り立っているものですね。

急いで手荷物を預け、保安検査場を通過。コロナ禍になってから飛行機に搭乗する機会がめっきり減り、コンコースからこの飛行機たちの列を見るだけでも気分が上昇気流に乗ります。

グラデーションに染まる空。2022年の夜明け。

本日の搭乗する機材はボーイング767-300。ボーイング777やボーイング787と比べると目立たない存在ではありますが、中距離国際線から国内地方路線までマルチにこなすオールラウンダーで、安定感は抜群です。計器類や飛行システムの情報をディスプレイに集約表示する「グラスコクピット」を世界で初めて採用した飛行機でもあります。

ボーイング767-300ER・JA618A

長いこと航空ファンをしていますと、「ANA派か、JAL派か?」という質問を受けることがしばしばあるのですが、私は基本的にはノーサイドです。スターフライヤーやAIR DOもいいと思いますし、どのエアラインを利用するかは搭乗しようとしている時間帯の運用機材や、窓際席が確保できるかといった観点で決めています。
唯一言えることは、「ANA」を“アナ”と読むのはちょっと・・・と思っています(笑) 正式には“エーエヌエー”で、ANAも“アナ”とは呼んでほしくないと思っています。(参考:「ANA」の読み方は? 「エイ・エヌ・エー」「アナ」、正しいのはどっち?-乗りものニュースー)

出発時刻が迫りましたので、フライト前のroutineとして天候と飛行場の運用情報をチェックします。天候調査は主に出発地・目的地の天気、気温、風向・風速、気圧配置をチェックします。フライトお天気というパイロット用のサイトもありますが、パイロットの友人がYahoo!天気が一番使いやすい(特に風向・風速に関して)と話していたのを聞いて以来、Yahoo!天気を主に使用しています。気圧配置に関しては厳密には上空とは異なるのですが、等圧線の間隔や前線の位置はおおよその参考にはなります。
飛行場の運用情報は「国内ATIS」というアプリを用いて国土交通省から発表されているATIS(Automatic Terminal Information Service:飛行場情報放送業務)をテキストで入手します。

RJTT:羽田空港のコード
DEP RWY 05/34R
→離陸には05(D滑走路)、34R(C滑走路)を使用中という意味

このATISは暗号のような文字列に滑走路の運用や飛行場への進入形式などの情報が凝縮されており、ここに気象情報を加味して、頭の中でフライトのイメージングを行います(笑)
そんなことを知って何になるのかというツッコミを受けそうですが、スポットから滑走路に行くまでに時間がかかりそう、この進入形式の場合は降下の経路が長い、等のイメージがわきますので、定時運航できるかどうかが何となく予想できるようになります。

出発時刻の15分前に搭乗開始。

第2ターミナル北ピア・53番ゲート

早めの搭乗開始で定刻に出発できるかと思いきや、出発時刻になってもカーゴルームの扉が開いたまま。何が起きたのかと機外の動きを凝視していると、キャスターの脚が折れたキャリーケースが出てきました。

それだけが遅れた原因ではないかもしれませんが、手痛い10分弱の出発遅延。こういう些細な遅延は新たな遅延の呼び水にもなるもので、油断は禁物。特に近くのスポットで他の飛行機がプッシュバックを開始すると、こちら側の移動経路が塞がれて身動きが取れなくなってしまうこともあります。なので皆様、1分1秒を大切に、定時運航のために協力していきましょう♪

気を取り直して、スポット53を出発。翼端監視員(ウォッチマン)が右手を右手を挙げて左手を振り、クリアランスが確保されていることを合図しています。

このお仕事、一度はやってみたいなあと思うことも・・・

スポット53の場合はトーイングカーでプッシュバックするときに機首を東に向けるしかありませんが、例えばスポット61から出発するときは機首が北・西・南の3方向に向く可能性があります。それによって滑走路まで地上走行する経路が変わりますので、周辺のスポットの飛行機の動きを注視しながら、管制からの指示に“全集中”です。

第2ターミナルのスポット配置(写真上方向が東)
*AIS JAPANより引用

エンジンスタートしてトーイングカーが外れ、地上走行の準備が整うと、パイロットが管制に地上走行の許可を求めます。プッシュバックや地上走行を采配するのは「東京GND(グランド)」という管制席で、「ANA13, Taxi to R-WAY 05 VIA C, Hold short of C-4.(ANA13便、滑走路05までC誘導路を走行し、C-4で待機してください。」のような指示を出します。ここから先は滑走路に行くまでに「C-4で転回してE誘導路に入ってください」のような追加の指示が発出されますので、手元のスマホに表示させた空港マップを参照しながら、「そろそろ曲がる」なんて予想を立ててます。

*AIS JAPANより引用


羽田クラスの多数の飛行機が行き交う空港で、ミス一つなく円滑に地上走行をコントロールするのは神業でしかありません。管制官は目視のみではなく、ASDE(Airport Surface Detection Equipment:空港面探知レーダー)というシステムを補助的に用いています。1つの空港には1つの管制席が基本ですが、羽田空港は複数のエリアに分けて管制しています。

*AIS JAPANより引用

いよいよ滑走路が近づいてくると、「東京TWR(タワー)」という離着陸を担当する管制官にハンドオフ(移管)されます。このイニシャルコンタクトのときに「You are No.●」と、離陸の順番が通告されるので、離陸までどのくらいの時間がかかるかの参考になります。今回はNo.2。滑走路の手前で、左手に初日の出とJALの出発機との競演が見れました。

いよいよ滑走路が近づいてきました。

滑走路に入る前には風向灯をチェックします。ほぼ向かい風の方向に風が吹いていますので、ちょうどいい感じですね。

ここまで書いておきながら、まだ離陸していないという・・・(笑)
それでは、フライトの続きは後編でお送りいたします。

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