キャビンの窓から・後編
2022.01.01
伊丹空港へ向かって、D滑走路・ランウェイ05を離陸。
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出発地から到着地までの経路はあらかじめ定められていまして、羽田-伊丹線の場合は
RJTT(羽田空港)-LAXAS-Y56-TOHME-Y54-KOHWA-Y546-AGPUK-MIRAI-ABENO-IKOMA-RJOO(伊丹空港)
※黒字はウェイポイント、青字は航空路
となっています。だからこそ、羽田空港から伊丹空港に向かうときに富士山は右側、福岡空港に向かうときは左側といった公式が成立します。この経路の中でも、空港から上空の航空路に向かうための経路をSID(Standard Instrument Departure:標準経路出発方式)と呼び、羽田-伊丹線はLAXAS THREE DEPARTUREを使用します。この経路上は主に「東京DEP(ディーパーチャー)」という管制席が担当し、航空路に到達するところで所沢の「東京ACC(コントロール:東京航空交通管制部)」に移管します。
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*AIS JAPANより引用
もちろん寸分の違いもなくこの経路通りということはなく、適宜管制官がショートカットの指示を出してくれることが多いです。あるいは経路上に積乱雲を認める場合などは、パイロットから経路変更(Deviation)のリクエストを出します。予定された経路はあらかじめ飛行システムに入力されていますので、パイロットは管制から指示された変更箇所や高度、方角をコンピューターに入力する作業を行っています。離陸直後にオートパイロットに切り替わりますので、車の運転手がハンドルを握るように常時操縦桿に手を触れることは絶対にありません。
揺れも少なく順調に上昇し、伊豆半島上空を通過。
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巡行高度の2万4000フィートに到達しました。
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西行きは偶数、東行きは奇数という規則。
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巡航高度は天気予報や前便からの情報を元に出発前に決定して管制承認を受けていますが、揺れの状況次第では適宜アップダウンして調整します。余談ですが、前にあるパイロットの方が「最初に入る層を間違えると変に揺れるから、常に正しい層に入ることを意識して飛んでいる」と話されていて、外科医と同じだなと、妙に感心したものです。
こちらが航空路図です。見慣れていないと、目がチカチカしますよね。
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*AIS JAPANより引用
ドリンクサービスの紙コップが「鬼滅の刃」仕様でした。自慢ではありませんが、鬼滅の刃は1秒も観たことがありません。。
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水平飛行はあっという間で、紀伊半島にさしかかると一気に高度を下げていきます。そして関西APP(アプローチ)という管制席に移管され、最終進入経路に向かっていきます。関西地区の3空港(伊丹・関空・神戸)周辺はトラフィックが輻輳していますので、出発・進入に関する管制は関西空港の管制官が一括して行う「広域管制」というシステムが採用されています。
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航空路から空港に向かっていく経路も、あらかじめ定められています。
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生駒山地の上空を通過し、いよいよ大阪市街地が近づいてきました。
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伊丹空港の最終進入は定番の「ILS RWY 32L」。伊丹空港に北側から進入するケースは極めて稀で、我々の業界では「ワンフォー」と呼びます。(滑走路14L/Rを使用するため)大阪に用事がなくても羽田と伊丹を往復し(笑)、数え切れないくらい伊丹空港に着陸している私ですら、「ワンフォー」は1度も経験がありません。
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*AIS JAPANより引用
霧が濃くて完全自動着陸を行うなどの特殊な状況でなければ、最終進入中にオートパイロットから手動操縦に切り替わります。
今や羽田空港にも都心上空を通過する経路ができましたが、着陸直前に市街地上空を通過する大迫力は、まさに伊丹空港の醍醐味です。
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着陸する飛行機を間近に見られる、航空ファンの聖地
無事、32Lに着陸。
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定刻から約10分遅れで到着。
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次の目的地に向かうまで少し時間があったので、展望デッキを散策。
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やっと伊丹空港に着きましたが、皆様いかがでしたでしょうか。この他にもエンジンの回転数、翼面の動き、ギア(車輪)の展開、様々なことを“見て、聞いて、感じて”搭乗していまして、これより10倍以上詳しく書けそうな気がしますが、今回はこのくらいにしておきます。(笑)
外科手術の世界の「アッペ・ヘモ・ヘルニア」ではないですが、羽田-伊丹線は一見シンプルに見える中にもフライトのエッセンスが凝縮されていて、非常に奥が深い路線です。皆様も大阪にお出かけの際は、ぜひ飛行機をご利用いただければ幸いです。